地方銀行に就職、転職を考えている方や現在、銀行で働いているみなさん!
「地方銀行の将来性はどうなんだろう。」 「合併も全国で進んでいるけど実際の状況はどうなんだろう。」と考えたことはありませんか?
結論、将来性について銀行自体がなくなりはしないが、収益面できびしいと考えます。
実際には全国の銀行で金利低下などから収益面が厳しくなり、業界的に大きな変化が起きています。
今回の記事では実際に銀行での働いた経験や合併を経験した体験談をもとに書いております。この記事を通して、地方銀行について知ってもらえたらと思います。
地方銀行のビジネスモデル
地方銀行の将来性を考える際に地方銀行のビジネスモデルについてお話します。
結論ですが、銀行が合併を行ったりするのは昔みたいに稼げなくなったから経費削減を行い、組織として存続させるため行っております。そのため銀行の収益はどこからあがっているのかを最初にお話しします。
銀行業務は預金、融資、為替が3大業務と言われております。お客様から預かった預金を融資したり、送金したりと日常生活には必要不可欠な業務を担っております。主なお客様は地域に住んでいる方や地方の中小企業が対象となります。
また3大業務に加えて、投資信託・保険商品の金融商品の販売や外国通貨とのデリバティブ、信託業務の取次やビジネスマッチングを行っております。
銀行の収益源は以下のとおりになります。
- 融資の利息収入
- 送金の手数料、ATMの利用手数料、手形の取立手数料
- 投資信託・保険の金融商品の販売手数料
- 通貨オプションといった外国通貨デリバティブの組成手数料
- 信託業務の取次やビジネスマッチングの取次した手数料
- 本部での株式、投資信託等の有価証券運用による収益
1つずつお話します。
融資の利息収入
融資には大きく個人向けの融資と法人向け融資との2つに分かれます。
個人向けは住宅ローンや車のローン、学資ローン、カードローンのようなローンがメインとなります。法人向けは都道府県や市区町村のパッケージ化された融資商品や銀行独自の融資商品がメインとなります。
融資には金利があります。金利に基づき、銀行は利息収入が入ります。融資期間中は利息収入が入りますので、銀行の安定した銀行の収益源になります。
窓口での手数料収入
銀行の窓口やATMでかかる手数料収入も収益源になります。
振込にかかる振込手数料やATMでのお金引き出しにかかる手数料、手形や小切手を換金する際にかかる取立手数料が該当します。
投資信託・保険の金融商品の販売手数料
投資信託を販売すると販売手数料や信託報酬の一部が銀行に収益として入ってきます。販売手数料は申込金額の2~3%ぐらいの水準で収益となります。
また保険商品も同様に保険を販売するとその申込金額に応じて、手数料が収益となります。
通貨オプションといった外国通貨デリバティブの組成手数料
法人のお客様の中でも外国へ輸出・輸入を行っているお客様に対しては、将来の為替変動のリスクを抑えるために、通貨オプションを組むことがあります。
例えば将来円安が見込まれているのであれば、今の為替レートで一定期間、外貨を購入できるようにするといったイメージです。
複雑な取引、仕組みになりますので、スキーム構築に対する手数料が発生し、銀行の収益となります。
信託業務の取次やビジネスマッチングの取次した手数料
個人のお客様に対しては遺言信託といった信託銀行への業務取次を行えば、手数料収入が収益となります。
法人のお客様に対しては銀行の情報量を活かし、ビジネスマッチングを行い、取引先を増やしたり、外部のコンサルを紹介したりとニーズに応じて紹介を行います。その紹介料が収益となります。
本部での株式、投資信託等の有価証券運用による収益
今までの収益源は営業店目線からのお話でしたが、本部でも有価証券を運用する部署があり、そこで株式や不動産(REIT)、国債、投資信託などを保有し、配当収入や売買による収益を確保しています。運用金額も大きく、収益金額も大きいです。
ざっくりとですが、銀行の主な収益源についてお話しました。実際はより細かいのですが、ここではイメージとして捉えていただければと思います。
地方銀行の将来性を疑問視する理由
では、なぜ銀行の将来について疑問視されているのでしょうか。yoshioは以下のとおり考えます。
- 低金利の長期化による利息収入の低下
- 地方の人口減少や企業数の減少
- IT業界などの異業種の参入
低金利の長期化による利息収入の低下
バブル崩壊以降、銀行融資の金利は低下傾向にあります。わかりやすい指標が住宅ローンの金利ですが1%を下回っております。
この要因としては日銀の政策的な部分と他行との競合の2つの要因によりこの状況が継続していると考えます。
日銀の政策として、景気が落ち込んでいるときには金利を下げ、銀行が融資を増やし、お金を巡らせようとします。現在もコロナが流行しており、金利を引き上げる動きは当面ないのではと考えております。
また日銀の政策に加え、オーバーバンキングである状況の中で金利競争が激しく、各銀行による低金利での融資が増えております。借りるほうとしては良い話ですが、長期化すれば銀行の収益にも影響がでてきますし、将来的には減収となってきます。
地方の人口減少や企業数の減少
日本全体で少子高齢化が進む中、地方では都市部へ人口が流出し、人口が年々減少傾向になっています。
また高齢化が進み、後継者不在などから企業数も減少傾向にあるため、地方を主な商圏としている地方銀行にとっては大きな影響となります。
IT業界などの異業種の参入
ネット銀行やIT業界でのオンライン決済などIT業界の企業が金融に参入が多くなっています。またAIの台頭により、銀行の窓口業務が不要となったり、融資の審査もデータに基づきAIで行うため不要になったりとお客様にとっては利便性が高まる一方、昔からのやり方が通用しない時代になってきています。
地方銀行では高齢者のお客様も多いですが、時代が経つことにつれ、ネット銀行のシェアは大きくなり、地方銀行の収入減少につながる可能性があります。
地方銀行が取り組んでいること
収益の減少を受けて、地方銀行ではいろんな施策を講じています。
- 投資信託・保険の販売や取次業務などを通した金利収益以外の収益確保の強化
- 銀行同士の合併による経費削減
投資信託・保険の販売や取次業務などを通した金利収益以外の収益確保の強化
銀行の本業はお客様から預金を預かり、融資をすることによる金利収入が収益源でしたが、超低金利の長期化により、収益を確保することが難しい状況下です。
銀行ごとに取組みは細かくは異なると思いますが、大筋は以下のような取組みを行っていると思います。
・投資信託や保険の金融商品の販売の強化
投資信託や保険商品を販売すると販売金額×2~3%の手数料が入ってきます。また投資信託においては残高を増やせば運用期間中は信託報酬も入ります。
半期ごとに目標(ノルマ)が割り振られますので、いかに多くのお客様に大きい金額で販売するか毎日奔走しているのが現状です。
・ビジネスマッチングやデリバティブ、シンジケートローン組成といった手数料収入
銀行が保有している情報量はかなり多いです。この情報量を活かし。取引先を紹介するビジネスマッチングには紹介手数料が発生します。
また為替リスクを減らすためのでデリバティブや複数の銀行が協調して融資するシンジケートローンも案件組成に対する手数料収入が発生しますので、担当の企業に対して積極的に提案が行われています。
銀行同士の合併による経費削減
全国的にも銀行間の合併が進んでいる傾向にあり、ニュースでも取り上げられております。地方には地銀やメガバンク、信金・信組、農協、ゆうちょなどの金融機関が多数存在し、狭い市場のパイを奪いあっています。
収益の減少や地方の人口減少、企業数の減少から銀行同士で合併を行い、店舗数を削減したり、合併による余剰人員の削減を行ったりし、経費削減する方向性に動いています。銀行員は地方の中でもともと給与水準も高いことから経費削減効果は大きいかと思います。
yoshioがいた銀行も合併を行った経緯があります。またその合併前後でどんなふうに変わったのかなどは別の機会にお話しさせていただきたいと思います。
つまり地方銀行の将来性ってどうなの?
将来性について考えるときに将来性の定義によって解釈が分かれるかと思います。ここでは幅広く考えてみました。
・地方銀行がつぶれるかつぶれないか
結論はつぶれないと思います。
なぜなら、銀行には金融仲介機能がありますので、万が一つぶれたりした場合には影響が大きいです。金融庁への報告や財務の開示もしておりますので、つぶれる可能性は少ないです。
ただ、現在も銀行間同士の合併は行われておりますので、今ある銀行の名前が変わったり、ポジションが変わることはあり得ると考えます。また現在、労働に関する法律も厳しいのでリストラを行う可能性も少ないかと思いますが、大企業を中心に行われている希望退職や片道切符の出向は今後増えてくる可能性はあると考えます。
・給与は下がる可能性や出世できないのでは?
地方の中では地方銀行はかなり給与水準が高いです。ですので地方の平均年収と比べると出世しなくてもいい給料はもらえると思います。
今後給与が下がる可能性は少ないと思います。なぜなら銀行員の仕事は細かくまた営業目標(ノルマ)も大きいので、お金がモチベーション維持となっている人も多いと思います。可能性はないことはありませんが、給与を減らすことは最後の手段だと思います。
出世については今後難しくなるのではと思います。理由は今後銀行同士の合併がある前提で話すと、シンプルに競争相手が増える一方、上のポジション数は合併により現状維持か減少すると考えるからです。銀行員ですので評価される人はミスをせず、数字を上げる人が上がれる傾向にあるので、そこだけを追求すればいいだけですが、大変ですよね。
以上、ざっくりですがなんで地方銀行の将来性って大丈夫なのかについて考えてみました。どこの会社で働くにしてもメリットとデメリットはあると思います。
少しでもみなさんの情報収集のお役にたてればと思います。